【早稲田ヨーロッパ亭とは全く異なるルーツを持つソースカツ丼】

ソースカツ丼に関しては「早稲田のヨーロッパ軒が元祖」という説が主流だが、ヨーロッパ軒のソースカツ丼が歴史的は一番古いものだとしても、現在全国に点在するソースカツ丼全てのルーツだというわけではないのだ。 詳しくは『ソースカツ丼のルーツ』を見て欲しいのだが、今回は、 群馬県の前橋で独自に開花した『前橋流ソースカツ丼』をちょこっと紹介してみたい。


【モノのない時代が生んだソースカツ丼】

上毛電鉄 中央前橋駅近くの賑やかな商店街のはずれにある『西洋亭 市』は創業が大正四年の老舗の洋食屋だ。

2006年末、来店したのだが、偶然ご主人の気まぐれで普段より1時間早く夜の営業を始めており、他の客がいない間、ソースカツ丼についてご主人からじっくりお話を伺う機会を得ることができた。

『西洋亭 市』のソースカツ丼を創案したのは、現在の店主の祖母さんで、戦中−戦後の時期とのこと。物が無い時代であり、卵とじカツ丼を調理しようにも卵が手に入らず、なんとか別の方法でと試行錯誤した結果、現在のソースカツ丼を創作されたのだとか。

先に書いた ヨーロッパ軒(現在は福井で営業中)のソースカツ丼はドイツ料理を日本風にアレンジしたもので、カツも複数の薄く細長い肉を用い、衣もいわゆる日本風カツ丼のそれとは異なる。

一方『西洋亭 市』のソースカツ丼のカツは円形に叩き伸ばした一枚の肉で、衣は日本風。これら二つのカツ丼はどちらも個性的でどちらも独立したルーツを持つ料理なのだ。


【ご主人の祖母様が生み出した秘伝のソース】

『西洋亭 市』のソースカツ丼は「キャベツが敷かれていない」「煮込んでいない」というタイプだ。 他の特徴としては、和とも洋ともとれる独自のソースの味と香りだろう。 祖母様が考案したソースを今も引き継いだこのソースの作りかたは門外不出で、他の料理人が厨房にいないときにご主人が一人で作っているのだとか。 和の風味の正体を尋ねてみると、新鮮なミカンの皮や昆布など全部で12種類の秘伝の素材を使っているらしい。祖母さんの情熱が生んだまさに奇跡のソースというわけだ。

テイクアウトも可能。もちろん秘伝のソースもついてくる♪

内装はかなり『若者風』な感じだった。いまでも営業しているのだろうか?