写真が「夜中に音を立てる水瓶を担いだ石像」なのですが、まずはこの石像がある「稲荷鬼王神社」について説明します。
この神社は新宿の「ディープ地区」の外れにあり、まさに、魔界を統べる鬼を祀る神社という感じですよね。
稲荷鬼王神社の名は、旧大久保村の氏神だった稲荷神と、 熊野から勧請された鬼王権現とが合祀したことに由来するらしいのですが、ボクとしては、平将門の幼名「鬼王丸」から取ったという謂れの方に、ものすごく興味があるわけです。
実際にここの神主さんとお話をする機会があったので、興味本位で聞いてみたのですが、「将門との関係は定かではないです」と前置きはされましたが、「代々ここの神主は将門討伐の本尊である成田山へのお参りを禁じられている」 というお話も伺えたのです!
こういうお話が伺えると、一人散歩もグググっと面白みを増してくるってもんです。ここ稲荷鬼王神社は、関東はおろか日本全国に散らばる「将門伝説」の一端を担う神社の一つというわけです。しかも名前が「鬼王」ですからねぇ。そのご加護たるや相当のもんだと思いませんか?
鬼の王様を祀る神社ですから、毎年行われる節分祭でも「鬼は外」とは言えるはずもありません。 前述した神主さんのご説明でも、「福は内、鬼は内」と唱えながら豆をまくのだそうです。やっぱ、豆はまくのか・・。
ただ「鬼を祀る」と言っても、どうやら「鬼」の意味が、現代のそれとは多少違うようですねぇ。
こちらで祀れれている鬼=鬼王権現とは、「月夜見命」「大物生命」「天手力男命」の三神のことらしいです。
月夜見命はツキヨミを指すのでしょうから、天照大神の弟で、昼を治める天照大神とは対照的に夜を支配する神様です。大物主は(一説には大国主命とも同一視される)大和朝廷以前の日本を支配していた権力者が神格化されたもので、天孫系の神様(天照大神など)以前から日本で信仰されていた国津神系の神様ですので、これも天照大神の対極の存在と言えるでしょう。
一方、天手力男命は「天の岩戸に隠れた天照大神を引っ張り出した神様」ですので、天照大神と同じカテゴリーに属しそうですが、名前の通り「怪力で天照大神を引っ張りだした」わけですから、なんとなくですが「天照大神に従順な神様」という感じではないようですね。
ま、なんとなくですが、そんなこともあり、ここ稲荷鬼王神社には、「アンチ勢力」的なニュアンスを感じてしまうのですよ。そういうところが「新宿ディープゾーンにある神社」らしいところでもありますよね。
ボクは見ていないのですが、宮神輿には鬼面が彫られているのだとか。是非、一度見てみたいです。
新宿の街中にポツンと存在する稲荷鬼王神社。しかし、中身は相当に濃いのですよ!
で、いよいよ「夜中になると音を立てる水瓶を担いだ石像」について説明します。この石像は文政年間《1818〜1829》の作らしいので、200年ぐらい前の作品のようです。
神社の案内板によれば「この水鉢は文政の頃より加賀美某の邸内にあったが、 毎夜井戸で水を浴びるような音がするので、ある夜刀で切りつけた。 その後 家人に病災が頻繁に起こったので、天保四年(1833)当社に寄進された」とのことです。
なぜこの石像がそのような音を立てるようになったのかについては説明がないのですが、それも含めて「昔話的で面白い」という感じですね。
上の案内文によれば、この石像の肩には「刀で切られた跡」があるとのことです。
拡大写真を下に掲載しますが、どうでしょう? それっぽい傷跡は見られますかねぇ。
確かに、ツルンとした右肩と見比べると、左肩は刀傷らしきものが刻まれていますねぇ。
こういうのを発見した時の喜びって、いいもんですよねぇ♪
この石像にそもそもどんな謂れがあるのかはわかりませんが、そういうときは勝手に作っちゃえばいいんですよ。面白いこの石像の謂れを皆さんも考えてみませんか♪