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【4.不味いラーメンの法則】


以前、東京の某繁華街で働いていた頃の話です。

同じ職場の若手社員たちがラーメン屋の話で盛り上がっていたので、何気なく話に加わると、どうも近所にすごく不味いラーメンを出す店があるらしいのです。

「にへどんさんも今度一緒に行きましょうよ」と誘われ、数日後に数人で行くことになりました。不味いと判っているラーメンをわざわざ食べに行くというのもおかしな話なのですが、ボクもその手の「おふざけ」が大好きなので、彼らとともに興味心身でその店に入りました。

「味噌ラーメンが極端に不味いですよ」と言われ、味噌ラーメンをオーダー。運ばれてきたそれはなんとなくシンプルすぎる感じ(つまり具がほとんど乗っていない)の味噌ラーメンでした。

で、そのスープを一口飲んでみて愕然となりました。

当時からラーメン専門店では、「特選魚介だし」とか「鳥ガラを一晩煮込んだ」だとかそういう「ウンチク」を売り物にしていたのですが、その味噌ラーメンのスープは単にお湯に味噌を溶いただけのような味しかしないのです。しかも底のほうに味噌が溶けずに溜まっているではありませんか。

ボクの第一印象は「これ厨房の間違いで運ばれてきたんじゃないの?」でした。

怪訝そうなボクの顔を覗き込むように一緒に来た同僚が悪戯っぽい笑みを浮かべながら「ね、不味いでしょ?」と楽しそうにささやいていました。

不味いというよりはむしろ料理を知らない人が“イメージだけで”作ってしまった感のするラーメンでした。麺の茹で方は普通でしたが、ほとんど味がしない味噌が溶けているだけのスープと一緒に食べていると、自分が食事制限を受けている入院患者のような気分になってしまいます。

ボクが「これって、いつもこういう味付けなの?」と(店員に聞こえないように)ささやくと、一緒に来た同僚たちは下を向きながら笑いをこらえて肩を震わせていたのです。 しかしこんな不味い(というか失敗作の)ラーメンを出す店にもかかわらず、店内は満員でした。ほとんどが若いグループ客で、これまたたいてい味噌ラーメンを食べていました。

そしてそのとき別のグループで交わされる衝撃的な会話が耳に入ってきたのです!

「な、不味いだろ?」 「ほんとだ、マジ不味い!」

という会話の後にそのグループも皆、下を向き笑いをこらえて肩を震わせているではないですが  いやそのグループだけではないのです。その店にいる若いグループ客は、皆、不味いラーメンを目当てにこの店にきていたのです。

「すげー、これいつもこんなんなの?」 「笑えるな♪」

などの会話がひそやかに店内を満たしていました。そうなのです。その店は「不味いラーメンを出すことで客を集めるラーメン屋」だったのです!

ま、店側で本当にそういう意図で不味いラーメンを作っているのか、それとも単に作ったラーメンが不味くて、結果的に不味さが客を呼ぶようになったのかは知りませんが、その店は確かに「不味いラーメンの存在を仲間に教えたい」という顧客心理(?)によって大繁盛してる店だったのです。

まさ「極めれば力になる」の最高の事例ではないでしょうか。

この話は1995〜1996年ごろの出来事です。2000年ごろにはこの店はもう無くなっていたと記憶していますので、一体どれくらいの期間、この店は「ラーメンが不味い」ということを売りにして繁盛していたのかは定かではありません。

しかし、とても人通りの多い立地条件であったにもかかわらず閉店してしまったということは「インパクトだけでは恒常的な繁栄は望めない」ということなのでしょう。

不味いラーメンの法則:
奇をてらったインパクトだけでスタートダッシュは制することができても、やはり長い目で見れば実力がモノを言う。



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