秋田県にある男鹿半島の海には「棒アナゴ」という謎の生物が生息しています。まるで宇宙からの外来生物のようなヌルヌルした筒状の形態で、推進100メートル程度の海底をすみかにしているようです。
棒アナゴ漁は肉体的にも技術的にも大変な作業ようで、棒アナゴを出してくれた居酒屋のご主人によれば、現在、この棒アナゴ漁ができる船は一隻しかなく、週一回ぐらいしか漁には出れないとのことでした。
というのも、棒アナゴの漁場は漁港から船で3時間もかかる場所にあるとのことで、昼過ぎに港を出発し、夕方前に「魚の切り身を入れた壷状の漁具」を、奴らの住む水深100メートル海底に設置し、夜間に漁具を引き上げるという工程のため、漁港に戻るのは夜中の2時頃になるというかなりハードな漁だからです。
しかも、その後の「処理」も大変な作業で、陸地で鉄棒に頭を突き刺し吊るし、日干ししながら手でシゴきヌメリとともに内臓や血液などを取り除くという、本当に手間がかかるとのこと。
そんな大変な漁であるため、現地や近隣の場所以外ではほとんど出回っていないのです。
「棒アナゴ」という名称から「アナゴの一種かな」と普通は思いますが、調べてみると、どうやら「棒アナゴ」は「アナゴ」ではなく「ヌタウナギ」という生物の一種だとのことでした。
で、この「ヌナウナギ」、「ウナギの一種かな」と思ったら、これもまた違っていて、ヌタウナギは「ウナギ」ではなく、学術的には「無顎類」と呼ばれる非常に原始的なイキモノで、「脊椎動物」でありながら「骨格を持たない」らしいのです。
口には歯も無く、魚介類の死骸に喰らい付いては、ジュルジュルと体内に吸い込むように摂取するとのことですので、もしかしたら本当に「宇宙からの外来種」かもしれないです。
てなかんじで、調べれば調べるほど、逆になんだかさっぱり解らなくなってきましたので、「棒アナゴ」についての学術的に知りたい方は、是非、他のサイトをあたってください♪
上の写真が「棒アナゴの丸干し」です。実はボクが棒アナゴを初めて食べたのは秋田県ではなく、山形県 鶴岡市のプレハブ雑居ビル内の“山形弁が飛び交う居酒屋”でした。
その店のご主人の知り合いが男鹿半島にいらっしゃるらしく、棒アナゴを定期的に仕入れているのだとか。
こんがり焼いた「棒アナゴの丸干し」は、バリっとした固めの皮をかみ締めると、ジュワっとエキスがにじみ出てくる、という感じの、これぞまさに「酒のアテの王様」という感じです!
「海の命」を丸ごと食べている、という実感で、ぬる燗の相棒としては、ワタシが過去食べた全ての肴の中でもトップクラスだと思いますよ。
しかも安いんです! 上の写真で400円なのですから。
「棒アナゴ」に合う酒としては、やっぱり「米の風味がガツンとくる酒」が良いですね、是非それをぬる燗で♪
いまどき流行りの「口当たりが良くてスッキリとしたフルティーなお酒」なんて、調子こいた小娘にでも飲ませておきましょう。我らオジサンは、癖のある棒アナゴをあてに、ガツンした酒をチビチビやりながら、テレビで大相撲中継でも観ましょうか。
そうなんです、棒アナゴをあてに飲む酒は、なぜか大相撲中継が良く合うのですよ♪
先に書いた「鶴岡の居酒屋」で棒アナゴを初体験して以来、ボクは棒アナゴを求めて秋田県の日本海岸にもよく出かけるようになりました。
そこでも好みの居酒屋を見つけて、棒アナゴをあてに地酒を楽しんでいるのですが、その秋田県の居酒屋のご主人に聞いたところ、棒アナゴ漁が危機に瀕しているとのことなのです。
(2018年ぐらいに聞いた話で、その後、例の「流行り病」のせいでめっきり出かけられなくなったので、現状はどうなんでしょうか?)
現在、「棒アナゴ漁」をされている漁師さんはやはりお一人のみらしいのです。
で、昨今のこの手の話と同じで、その方にも跡継ぎがいないらしく、上に書いたようなかなりハードな漁ゆえ、棒アナゴ漁そのものの存続がかなり危ぶまれているのだとか。
その店のご主人によれば、別の方が漁の権利を譲り受けたか借りたかして、棒アナゴ漁を行っているらしいとのことでしたので、是非、その方が「棒アナゴ漁」を継続していただきたいなぁなんて思っている次第です。
ま、この手の話にはいろいろな複雑な問題もあると思いますので、完全部外者のボクがなんちゃらかんちゃら言うことではないのですけど、流行り病が落ち着いたら是非また秋田で棒アナゴをあてに地酒をチビチビやりたいんですよ♪
秋田地方の道の駅では棒アナゴが販売されているのです!
シンプルに盛り付けられた棒アナゴ。こういうのも嬉しい♪
「流行り病」のおかげでめっきり自粛ムードが続いていますが、こいつが解決したら、是非、これを読んで初めて棒アナゴを知った方には秋田に「棒アナゴツアー」に行っていただきたいですねぇ。
棒アナゴの素晴らしさを一人でも多くの方に知っていただき、是非、棒アナゴ漁が継続的に行われて欲しいものです。
土地ごとの自然の恵み、酒の恵み、そして人の恵み。酒と肴を通じて日本の文化に、いつまでも触れていきたいです。