一人旅ネタ&散歩ネタを紹介|けさらんぱさらん|

●池袋モンパルナスの地を歩く


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1.池袋モンパルナスとは

「東京の戦前 昔恋しい散歩地図(草思社)」によれば、昭和初期の池袋西側(※1)には、合計5か所に「アトリエ付き賃貸住宅」が並ぶエリアが存在し、まさに「池袋モンパルナス」とも呼べるような街だったらしいのです。(※2)

ボクの育った場所は池袋に近く、学生時代はこのあたりの盛り場にはよく出入りしていたのですが、どうやらボクが知っている「酔っ払いや客引きが闊歩する街」以外にも、「芸術家の街」という顔も持っていたようなのですよ♪

ちょっと意外な池袋の顔を探るために、前述した「東京の戦前 昔恋しい散歩地図」を片手に、このあたりを歩いてみたというわけです。

※1現在の現在の豊島区長崎、千早、要町あたり

※2最盛期には100軒以上もの「アトリエ付き賃貸住宅」が建ち、画家や詩人など通算1000人以上の若き芸術家たちが生活していた

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2.自由学園明日館

サンシャイン60を背にする場所に、こんな美しい建物があったなんて、この年になるまで知りませんでした!

この品格があり美しい建物は「自由学園 明日館(ミョウニチカン)」です。

1921年(大正10年)に羽仁もと子・吉一夫妻により設立された女学校だそうで、従来の知識詰込み型とは一線を画す、生徒に自ら昼食を調理させるなどの、「生活と結びついた教育」を進めた「自由教育運動の象徴」のような存在だったとのこと。

それにしても“従来の知識詰込み型とは一線を画す”という表現、その頃から使われていたのですね♪ いまでも頻繁に聞くこの言葉ですが、これはとりもなおさず「100年経っても日本の教育は『詰め込み型』から脱却できていない」ということなのでしょう。

ま、それはさておき、「酔っ払いと客引きの街」だと思っていた池袋に、かつてはこんな「知的空間」が広がっていたなんて、ほんと驚きです。

教室は「研修活動」などにレンタルしてくれるみたいです。

当時の生徒が作ったメニューがいまも残っていて、フランス料理、西洋菓子、日本料理、日本菓子の4つのカテゴリーで計69種のレシピが書かれています。

併設された売店。オサレ具合が「ここ本当に池袋?」と思わせてしまいますが、これはボクの偏見ですね。最近の池袋では意外とオサレ系も多いですから♪

道を挟んだ場所にある講堂。同じタイミングでこちらを撮影される方がいました♪ ここは昔のトイレも「見学」でき(使用はできません)、ちょっと懐かしい西洋便器が並んでいましたww

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3.立教大学セントポール

ペギー葉山の大ヒット曲(ってほぼ知らないかな)「学生時代」に出てくる「つたの絡まるチャペル」は「青山学院大学」にあるらしいですが、こちらも「その雰囲気」は負けてはいないですよね。どちらにせよボクの青春には「チャペル」とか関係なかったですけど・・・。

池袋における「酔っ払いのシンボル」が「ロサ会館」、「強さのシンボル」が「極真空手」だとすると、「知のシンボル」は立教大学でしょう。 別名の「セントポール」については、地方国立大学卒業のボクとしては「こっぱずかしくて発音しづらい」感じですけどね・・・。

上の写真の入り口から入った奥の方に、歴史的な建物として有名な「第一食堂」があるらしいです。 こんど学生のふりをして入ってみたいと思いますww。

この名称自体が、ボクの進入を拒んでいます♪

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4.池袋モンパルナスの残り香を探す

暗渠になっている谷端川沿いには「さくらが丘パルテノン」が建ち並んでいたらしいです。ここは別途「暗渠探索」もしてみたい場所ですねぇ。

「アトリエ付き賃貸住宅」があった5つの場所には、それぞれ「さくらが丘パルテノン」「つつじが丘アトリエ村」「すずめが丘アトリエ村」「みどりが丘アトリエ村」「ひかりが丘アトリエ村」というピカピカの名称が付けれれていました。

いまではその面影は残っていませんが、そうした土地柄の残り香を感じさせる「オサレ風味」を発見できるのです。 

最近できたばかりのドイツ食材のお店。イチゴのジェラート(ってドイツでもいうのかな)がすごく美味かったです。ドイツビールやドイツワイン、そしてソーセージなども豊富で、痛風さえなければガンガン買っていきたい気分だったのですが・・・。

ドラムスクールの前にあったオブジェ。これもかなり「ゲージツ」しています。このあたりには音楽教室もたくさんありましたねぇ。

接骨院なのにこのオサレ感は凄いです。さすが「池袋モンパルナス」です。

この看板、最高ですよね! 若き芸術家たちがジョッキを片手にゲージツ論を語り合うような店なのでしょう。

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5.熊谷守一美術館

じっと蟻を眺めるのが好きなボクとしては、この壁のレリーフには凄く惹かれるものがありますねぇ♪

今回の探索で初めて知った「熊谷守一」という名前なのですが、彼もまた「池袋モンパルナス」で青春時代を送った画家のようです。

調べてみると「極度の芸術家気質で貧乏生活を送った『画壇の仙人』と呼ばれた方」のようで、自画像などを見ても、なるほどそんな感じがするって感じの風貌なのですよ。

作品についてはボクなどが意見をいうことはできないのですが、この方の風貌は、ちょっと良い感じですねぇ♪ こういう顔をした方って最近のメディアにはめっきり出てこなくなりましたが、お話をじっくり聞いてみたいと思わせる雰囲気を漂わせていました。

なんていうか「自由な魂をもった大先輩」という雰囲気です。

まとめ

今回は、池袋西口から立教大学の裏手を歩き、山手通りを超えて千川方面へと抜けて行きましたが、このあたりには確かに「芸術っぽい残り香」が感じられました。

池袋(とくに西口)に抱いていた「酔っ払いと客引きの街」というイメージがだいぶ払拭されましたねぇ♪

でも考えてみれば、ここからさらに西の方に行くと「漫画の聖地・トキワ荘」もあるわけで、確かにこのあたりは「創作文化の聖地」だったのかもしれません。

そんな感じで、何気ない場所にも発見はあるものだなぁと感じた次第です。

今回の散策は前述した「東京の戦前 昔恋しい散歩地図/草思社」を大々的に参考にさせていただきました。 いやー、これすごく良い本ですよ。